あんしんを、あたらしく。~一般社団法人安心R住宅協議会~

住宅ストックを取り巻く現状

日本の住宅市場に関する政策は、住宅難解消や景気対策など、目的は異なっても常に「新築住宅」を対象とした供給と取得が繰り返されてきました。
戦後の住宅不足は数の上では1968年に解消されていますが、その後も50年にわたって新築住宅の供給を重視した施策が継続されています。
その間、住宅は世帯数の増加を上回るペースで増え続け、「空き家問題」は既に社会的な規模にまで拡大しており、2014年7月に総務省が公表した「住宅・土地統計調査」(2013年 10月1日 時点)の速報集計によれば、空き家率は13.5%にまで達しています。
2001年に、住宅施策の方向性として「ストック重視」が打ち出されましたが、その後もなかなか現実の制度としては具体化しませんでした。
しかしながら、少子高齢化、人口構造の変化、価値観の多様性、環境・社会問題、財政問題など、外部環境の変化は住宅市場にも影響を及ぼし、このままフロー重視の市場を継続することが困難になったことから、この数年でさまざまな方針、ガイドライン、政策が矢継ぎ早にまとめられています。
まさに現在は「住宅ストック活用型社会」への転換真っ只中といえる状況ですが、その転換を推進していく上で不可欠なのが、「住宅ストック(既存住宅)の流通を促進する仕組み」です。
長らく日本の住宅流通は新築住宅を中心に構成されてきたため、既存住宅については税制、金融、商習慣、商取引の成熟度、法的整備などが十分ではなく、社会的経験値がまだまだ乏しいのが実情です。
このような中で、2018年4月に宅地建物取引業法の改正によってスタートした「既存住宅取引におけるインスペクションの説明の義務化」は、「住宅ストック活用型社会」への転換がいよいよ本格的に始まったことを意味する大きな一歩となりました。
今後、これまでの商習慣から抜け出せず、消費者に対する「情報開示」の必要性に懐疑的な事業者は、インターネットによる情報流通を前提とする社会の中で急激に減少していくことになるでしょう。

良質な住宅ストックとは?

「住宅ストック活用型社会」が進行する中では、将来世代に継承できる「良質な住宅ストック(既存住宅)」を増やしていくことが重要です。
とは言え、現在流通している住宅ストックが悪質なものばかりなのかと言えば、決してそうではありません。
それでは、「良質な住宅ストック(既存住宅)」は、どのように定義されるべきなのでしょうか?
良質な住宅ストックが正しく定義され、その流通を促進するためには、良質な住宅に対する「適正な評価(インセンティブ)」と、その根拠となる「公平・中立な評価基準」、そして良質な住宅であることを証明する「認定(ブランディング)」と、「適切な情報開示」が必要です。
その中でも「公平・中立な評価基準」がなければ、住宅ストックの価値はほぼ「立地」「築年数」「相場」によって決定づけられ、建物の「安全性」や「機能性」といった性能(ハード)、「安心性」や「快適性」といった住まい勝手(ソフト)、さらにはデザイン、住まう人のニーズ、地域性などについてはほとんど考慮されません。
そこで当協議会では、良質な住宅ストックの、特に「評価」「金融・保険」「維持管理」に関する新たなマニュアルと商品づくりに取り組んでいます。
消費者にとって良質な住宅ストックが分かりやすく選びやすい仕組みを作ることで、透明で中立的な不動産流通市場を実現します。

住宅ストック流通に関する取り組み/事業紹介

健全な住宅ストック市場の実現に向けて

住宅の適切な維持管理(メンテナンス)は、住宅に関するライフサイクルコストの低減や住宅の資産価値の維持・向上につながるとともに、良質な住宅ストックの流通を活性化します。
2011年3月に閣議決定された「住生活基本計画(全国計画)」では、これまでの、住宅を「作っては壊す」社会から、「いいものを作って、きちんと手入れをして、長く大切に使う」社会への転換を目指して、住宅の質の向上と、適切に維持管理された住宅が市場において循環利用される環境整備を重視した「ストック重視の施策展開」を目標の一つに掲げ、関連施策を推進してきました。
これを受けて、2016年3月には5年ぶりに「住生活基本計画(全国計画)」が見直され、閣議決定されました。
その内容は、2016年度から2025年度までの10年間における住宅政策の指針となるもので、大きく3つの視点から分けることができ、8つの目標が掲げられています。

1.居住者からの視点

・【目標1】結婚・出産を希望する若年世帯・子育て世帯が安心して暮らせる住生活の実現
・【目標2】高齢者が自立して暮らすことができる住生活の実現
・【目標3】住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保

2.住宅ストックからの視点

・【目標4】住宅すごろくを超える新たな住宅循環システムの構築
・【目標5】建替えやリフォームによる安全で質の高い住宅ストックへの更新
・【目標6】急増する空き家の活用・除却の推進

3.産業・地域からの視点

・【目標7】強い経済の実現に貢献する住生活産業の成長
・【目標8】住宅地の魅力の維持・向上

日本の住宅市場や住宅政策のあり方は、少子高齢化や人口減少などを背景に大きな転換を迫られており、その構造改革が急務となっています。
しかしながら、従前の計画にもとづいた政策の進捗が決して十分ではないことから、新たな「住生活基本計画(全国計画)」は、実効性を伴う住宅政策の指針として機能することを期待されています。
以下、見直しが行なわれた「住生活基本計画(全国計画)」に掲げられている「8つの目標」の中から、着目すべきポイントを確認します。

【目標1】結婚・出産を希望する若年世帯・子育て世帯が安心して暮らせる住生活の実現

若年世帯・子育て世帯が希望する住宅を選択・確保できる環境を整備し、安心して子どもを産み育てたいという思いの実現を目指します。
具体的には、必要とする質や広さの住宅に居住できるよう支援すること、世代間で助け合いながら子育てできる三世代同居や近居を促進すること、地域ぐるみで子どもを育む環境を整備することなどが掲げられています。

【目標2】高齢者が自立して暮らすことができる住生活の実現

高齢者が安全に安心して生涯を送ることができるための住宅の改善・供給を行ない、日常生活圏においてあらゆるサービスが利用できる環境の実現を目指します。
具体的には、「新たな高齢者向け住宅のガイドライン」の策定、「サービス付き高齢者向け住宅」等の供給促進、「生涯活躍のまち」の形成、リバースモーゲージの普及、住宅資産の活用や住み替えに関する相談体制の充実などが掲げられています。

【目標3】住宅の確保に特に配慮を要する者の居住の安定の確保

住宅確保要配慮者(低額所得者、高齢者、障害者、ひとり親・多子世帯等の子育て世帯、生活保護受給者、外国人等)が、安心して暮らせる住宅を確保できる環境の実現を目指します。
具体的には、空き家活用の促進と住宅セーフティネット機能の強化、公的賃貸住宅の適切な供給、公的賃貸住宅団地の建替え等の実施、高齢者・子育て支援施設等の地域拠点の形成による居住環境の再生などが掲げられています。

【目標4】住宅すごろくを超える新たな住宅循環システムの構築

住宅の取得をゴールとするのではなく、適切な維持管理やリフォームの実施による住宅の質の維持向上が市場において適正に評価され、資産として次の世代に継承されていく新たな流れを創出するとともに、リフォーム投資の拡大と住み替え需要の喚起による多様な居住ニーズへの対応を目指します。
具体的には、インスペクションや住宅瑕疵保険等を活用した品質の確保、住宅性能表示や住宅履歴情報等を活用した消費者への情報提供の充実、既存住宅の価値向上を反映した評価方法の普及・定着、住宅を担保とした資金調達を行なえる住宅金融市場の整備・育成などが掲げられています。

【目標5】建替えやリフォームによる安全で質の高い住宅ストックへの更新

耐震性や省エネ性を充たさない住宅やバリアフリー化されていない住宅等の建替えやリフォーム、老朽化マンションの建替えや改修を促進し、安全性や質の向上を目指します。
具体的には、リフォームによる耐震性、耐久性等(長期優良化等)、省エネ性の向上と適切な維持管理の促進、消費者の相談体制や事業者団体登録制度の充実・普及、マンションの維持管理・建替え・改修に関する施策の総合的な実施などが掲げられています。

「住生活基本計画(全国計画)」には、2025年の成果指標として、いくつかの数値目標があります。
①既存住宅流通の市場規模を8兆円にすること(2013年:4兆円)
②リフォームの市場規模を12兆円にすること(2013年:7兆円)
③既存住宅に占める既存住宅売買瑕疵保険に加入している住宅の割合を20%にすること(2014年:5%)
④既存住宅に占める認定長期優良住宅の割合を20%にすること(2014年:11.3%)
⑤既存住宅に占める省エネ基準を満たしている住宅の割合を20%にすること(2013年:6%)
⑥耐震性のない既存住宅をおおむね解消すること(2013年:18%)

①②を合わせた市場規模目標は20兆円となっています。
これまでは「住宅ストック活用型社会」への転換が遅れ、市場規模も十分なものではありませんでしたが、インスペクションによる住宅情報の活用推進、リフォームの活性化、既存住宅ビジネスの多様化など、その転換に向けた動きは着実に進んでおり、今後10年間の既存住宅流通・リフォーム市場は大きく進展することが期待されています。

【目標6】急増する空き家の活用・除却の推進

計画的な解体・除却や利活用を推進し、増加を抑制するとともに、地方創生への貢献を目指します。

「住生活基本計画(全国計画)」には、初めて空き家についての数値目標が設定され、2025年には「その他の空き家」を400万戸程度にまでおさえようとする内容が盛り込まれています。
総務省が実施した「住宅・土地統計調査」では、2013年時点の空き家の数は全国で約820万戸とされていますが、このうち特に問題視されているのが、賃貸または売却用の空き家や別荘などの二次的住宅を除いた「その他の空き家」です。
2003年時点で212万戸だった「その他の空き家」は、10年間で1.5倍の318万戸にまで増加しており、このまま何の対策もとらなければ2023年には500万戸にまで膨れ上がるとも言われています。
こうした空き家の増加を抑制するための基本施策は大きく2つに分けられ、それぞれ、①生活環境に悪影響を及ぼすものについては「計画的な解体・除去の促進」を行なうこと、②それ以外のものについては「新たな住宅循環システムの構築」「空き家を活用した地方移住、二地域居住等の促進」「古民家等の再生・他用途活用」「他用途転換の促進」等を行なうことなどが掲げられています。
しかしながら、人口が減少して住宅の需要が減っているにも関わらず、空き家の解体・除却や利活用を促すことは決して容易ではありません。
空き家対策推進特別措置法に規定される「特定空き家」など、国や地方公共団体による解体・除去が大幅に増えることは考えにくく、所有者個人による解体・除去がどこまで増えるかも未知数であり、仮にそれらが進んだとしても、今度は低・未利用地の増加など、新たな問題につながることが予想されます。
また、空き家の流通を促進することで、「その他の空き家」が減少する代わりに「賃貸または売却用の空き家」が増加することや、物件のダブつきにより流通価格が下落することも懸念されます。
さらに、日本の世帯数は2020年頃から減少に転ずる見込みであり、「その他の空き家」の増加を抑制することだけでは根本的な解決に結びつかないことは明白です。
「住生活基本計画(全国計画)」は、今後の社会経済情勢の変化や施策の効果に対する評価などを見ながら、2016年度から10年間、おおむね5年ごとに見直しを行なうとされています。
次回の見直しにおいて、空き家問題のさらなる議論が期待されます。

【目標7】強い経済の実現に貢献する住生活産業の成長

住生活産業の担い手を確保・育成し、地域経済を活性化するとともに、良質で安全な住宅を供給できる環境の実現を目指します。
同時に、住生活に関連する新しいビジネスを成長させ、居住者の利便性の向上とともに、経済成長への貢献を目指します。
具体的には、地域経済を支える地域材を用いた良質な木造住宅の供給促進と、それを担う設計者や技術者の育成等の生産体制の整備、幅広い世帯のニーズに応える住生活関連の新たなビジネス市場の創出・拡大の促進などが掲げられています。

【目標8】住宅地の魅力の維持・向上

個々の住宅だけでなく、居住環境やコミュニティをより豊かなものにすること、自然災害等に対する防災・減災対策を推進し、居住者の安全性の確保・向上を促進することを目指します。
具体的には、住宅団地の再生促進、高齢者・子育て支援施設等の地域拠点の形成による地域コミュニティと利便性の向上の促進、密集市街地の改善整備、ハザードマップの積極的な情報提供等による居住者の災害時の安全性の向上などが掲げられています。

住宅ストックについて