あんしんを、あたらしく。~一般社団法人安心R住宅協議会~

ホームインスペクションとは?

ホームインスペクション(建物状況調査)とは、住まいの「健康診断」です。
建物に精通したホームインスペクターと呼ばれる住宅診断士等が、第三者的な立場で専門的な見地から、住宅の劣化状況についての検査を行い、瑕疵(欠陥や不具合等)の有無、補修すべき箇所やその時期、おおよその費用などを見きわめ、安心・安全な取引と住生活の実現に寄与するアドバイスを行うというものです。

2016年6月には、ホームインスペクションを義務付ける法改正(『改正宅地建物取引業法』の交付)もされました。事業者に対し、媒介契約締結時及び重要事項説明時にインスペクションの斡旋と検査結果の情報公開を義務付けています。

ホームインスペクションが必要とされる背景(中古住宅市場の課題)

日本は、欧米諸国に比べて既存住宅の流通個数が大幅に低いという現状があります。米国と比較した場合、日本の新築住宅着工戸数は、人口が約2.5倍ある米国と近い水準で推移している一方、既存住宅の流通戸数は米国の10分の1以下と見られています。

つまり、日本では既存住宅が消費者に選ばれる対象となっていない現状があります。

その大きな原因は、消費者の既存住宅に対する不信・不満にあります。新築住宅の取得者に対するアンケートでは、中古住宅を選択しなかった理由として、「隠れた不具合が心配だった」、「耐震性や断熱性など品質が低そう」などの回答が挙げられており、中古住宅の品質が明らかでないことが中古住宅の購入のネックになっています。(平成26年度住宅市場動向調査(国土交通省)より)

対して欧米では、日本ではまだ一般的でないホームインスペクション(建物状況調査)も、当たり前に行われています。このことから、ホームインスペクションの導入は、既存住宅流通の「透明性、納得性、安心・安全性、快適性、将来性」に対して、「消費者目線」で大きな影響を与えると言われています。

『改正宅地建物取引業法』と今後の法改正について

2016年6月に公布された『改正宅地建物取引業法』では、既存住宅の取引において、品質に関する正しい情報開示に努めようとするもので、取引の3つの過程で影響があります。

(1)媒介契約時
宅地建物取引業者が、売主または買主に、ホームインスペクションを行う事業者を紹介できるかどうかについて示し、意向に応じて斡旋する。
(2)重要事項説明時
ホームインスペクションの結果を買主に説明する。
(3)売買契約時
建物(基礎、外壁等、建物の構造耐力上の重要な部分)の現況を売主・買主が相互に確認し、その内容を宅地建物取引業者が売主・買主に書面で交付する。

さらに、抜本的な消費者保護の強化を目的に、民法の改正案が進んでいます。
この民法改正をにらみ、宅地建物取引業法以外にも、保険業法やマンション管理に関する法律などがより質の高い情報開示を求めて改正され、契約実務を変えようとしています。
不透明であった消費者のリスクを明確にする宅地建物取引業法並びに民法の改正は、今後の住宅・リフォーム市場に大きな影響を与えることになるでしょう。

ホームインスペクションの様々な活用シーンとは?

ホームインスペクションは、既存住宅の取引において様々な活用シーンが想定され、代表的なシーンは以下の通りです。

(1)既存住宅の「売主」が査定価格の算出に際して行う
(2)既存住宅の「買主」が購入の判断材料として行う
(3)「事業者」が既存住宅の流通促進のために行う
(4)「既存住宅売買瑕疵保険」のための検査として行う
(5)その他、広義のホームインスペクションとして行う(耐震診断や「フラット35」の適合検査等)

上記のそれぞれの内容について、説明していきます。
まず、(1)(2)については、(1)既存住宅の「売主」が活用するケースは ▶売主の皆様へ を、(2)既存住宅の「買主」が活用するケースは ▶買主の皆様へ を、ご覧ください。

(3)「事業者」が既存住宅の流通促進のためにサービスとして行うケースは流通させる前にあらかじめ検査を行い、住宅の劣化状況について明らかにすることで、消費者の不安を払拭することや、検査で明らかになった問題や課題を解決して、より良質な既存住宅に生まれ変わらせるため、リフォーム提案などと合わせて紹介するようなケースです。

現状はこの(1)~(3)のケースが中心となって活用されています。

既存住宅売買瑕疵保険について

一方、今後は(4)のケースも増えてくるでしょう。
「既存住宅売買瑕疵保険」とは、検査と保証がセットになった保険制度です。住宅専門の保険会社(住宅瑕疵担保責任保険法人)が保険を引き受け、万が一引き渡しを受けた建物の保険対象部分に瑕疵が見つかった場合は、その補修費用をまかなうことができます。

この保険に加入するには、既存住宅の基本的な性能(構造耐力上主要な部分、雨水の浸入を防止する部分など)について、専門の建築士による検査に合格する必要があります。そのため、既存住宅を購入しようとする消費者にとっては、安心・安全が確認された既存住宅の取得が可能になります。

この保険は「売主が宅建事業者の場合」と「売主が宅建事業者以外(個人間売買)の場合」、いずれもかけることができます。ただ、検査は保険をかけることを前提に実施されますので、検査だけ受けるということはできず、その検査に合格するために一定の補修工事が必要となる場合もあります。

消費者の安心感を高め、既存住宅流通の促進を図ることを目的として導入された制度ですので、ホームインスペクションの普及と相まって、加入の増加が期待されています。

(5)については、(1)~(4)の住宅の劣化状況についての検査に加えて、広義のホームインスペクションである耐震診断や各種適合証明書を発行するための検査を行うケースです。

このようにホームインスペクションは、活用の目的ごとにその内容も異なることを理解しておく必要があります。

ホームインスペクションの活用から始まる、既存住宅流通の変化

2016年の『宅地建物取引業法』の改正により、ホームインスペクションの普及を後押しする大きなきっかけとなることに間違いはなさそうです。

ホームインスペクションの普及が契機となって、消費者の納得・満足が高まり、安心・安全、かつ快適で、良質な既存住宅の再生・流通が実現します。

そして今後、より多くの既存住宅にホームインスペクションが実施され、建物の価値が「見える化」することにより、消費者の既存住宅に対する不安が解消され、透明で健全な市場が実現することが期待されます。

この時に、事業者は義務だから仕方なく取り組むのではなく、ホームインスペクションの意義と必要性を正しく理解し、業界が一体となって、積極的かつ前向きに取り組む姿勢が求められます。

そうすることにより、ホームインスペクションを入口として、

①その結果を、建物価格に反映する
②その結果に基づき、補修すべき箇所のリフォームプランを作成する
③その結果を踏まえて、その他の保証やサービスにつなげる

これらのことにより、日本における既存住宅流通の仕組みは大きく形を変えます。

正しい情報公開のもと、消費者・事業者双方が納得して取引を行い、良質な既存住宅の流通を促進していくには、ホームインスペクションがもつ役割とは極めて大きいといえるでしょう。

事業主の皆様へ