あんしんを、あたらしく。~一般社団法人安心R住宅協議会~

2020.09.13

【コラム】コロナ禍によるオンライン化の加速で不動産取引はどう変わるか

コロナ禍によるオンライン化の加速で不動産取引はどう変わるか

こんにちは。安心R住宅推進協議会の三津川 真紀です。

7月末から8月中旬にかけて連日のように1,000人を上回っていた新型コロナウイルス(以下、「コロナ」)の新規感染者数は、今月に入り多少の落ち着きを取り戻しているものの、依然として首都圏を中心に感染の拡大が続いています。そのため、外出の自粛やテレワーク(在宅勤務)を継続されている方も少なくありません。政府による3密(密閉・密集・密接)回避の要請は、飲食店のみならず、不動産事業者にもさまざまな影響を与えています。最も大きな変化は、人の移動が制限される中で、業務のオンライン化が進んだことでしょう。今回は、コロナ禍によるオンライン化の加速で不動産取引がどう変わりつつあるのかについて整理します。

 

オンライン化・デジタル化・DX化

 タイトルにある「オンライン化」という言葉は、誰もが一度は耳にしていると思います。それと類似した「デジタル化」や「DX(デジタルトランスフォーメーション)化」という言葉も、最近よく耳にすると思います。ではそれぞれどういう意味なのかと聞かれると、答えられない方の方が多いと思います。「オンライン化」とは、パソコンやモバイル端末(スマートフォン)などの電子機器がインターネットに接続された状態をいいます。「デジタル化」とは、アナログな現実世界をデジタルデータに変換する仕組みのことです。つまり、オンラインの状態を前提としてデジタルな仕組みが成立し、それによって離れた場所にあるヒト・モノ・コトがつながり、新しい価値が生まれます。さらに「DX(デジタルトランスフォーメーション)化」は、経済産業省によって、“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること”と定義されています。つまり、既存の効率化である「デジタル化」のさらに先を行く概念で、企業がデータとデジタル技術を活用して、経営およびビジネスの仕組み、サービスや価値提供の方法など、企業活動の多くを根本から革新していくことです。3つとも全く異なる言葉ですが、つながっている概念です。

 

不動産業界のオンライン化

 不動産業界はそもそも「オンライン化」が何十年も遅れている業界といわれています。東京商工リサーチが調査した全国社長の平均年齢(2019年12月末日時点)は、調査を開始した2009年以降で最高年齢を更新し、産業別の平均年齢の最高は不動産業の63.86歳でした。コロナ禍以前より「不動産テック」という言葉が聞かれるようになっていた一方、現場では依然として多くの業務を昔からの慣習やアナログな方法で行なっていました。そんな中、テクノロジーの流れがコロナによって半ば強制的に不動産業界にも押し寄せました。緊急事態宣言明けの5月に、国土交通省は「不動産業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」を業界団体向けに通達し、各事業者に安全衛生管理体制の確立を要請しました。つまり、今後の業務は非対面・非接触を心がけ、相応の対策を取らなければ集客面にも影響が出てくるであろうことを示唆するものです。社長が高齢で、中・小規模の事業者が中心の不動産業界においては、オンライン化を進められる一部の事業者と現状維持にならざるを得ない多数の事業者に二分されるでしょう。
 加速する不動産業界のオンライン化が、まずはコロナの感染予防対策として、その先に少子高齢化が進んだ社会の労働生産性とそれに伴う業務の効率化を見据えたものだとすれば、急の目的を有するものから段階的に対応していくことが、多くの不動産事業者と消費者のニーズを満たすことになるのではないかと考えます。

 

不動産取引のこれから

 不動産流通の現場は対面接客が中心であることから、コロナ禍において三密回避は必須です。ところが一般的な町の不動産会社は都心の店舗を中心にカウンター席のみの狭小店舗も少なくありません。そうなると最も安全な方法は、非対面・非接触の接客にシフトすることです。そこで、不動産取引のオンライン化が推奨されているのです。正確には前述のとおり、まずは業務環境をオンライン化して、不動産取引のデジタル化を進め、DX(デジタルトランスフォーメーション)化を目指している段階といえるでしょう。その中でも、既に実装している取り組みについて以下にまとめます。

問い合わせ

・マッチングサービス
 WEBを通じて、不動産に関わるさまざまな人や情報、サービスをマッチングするサービスです。マッチング例には、不動産の買主(借主)と物件情報、不動産の買主(借主)とオーナー、リフォーム工事などの発注者と事業者、賃貸不動産のオーナーと管理会社、スペース提供者と利用者などがあります。

接客

・WEB窓口
 不動産に関するさまざまな相談が、パソコンやモバイル端末(スマートフォン)などからリモートでできるサービスです。AI(人工知能)によるレコメンド機能やチャットボットを利用すれば、単純な提案や良くある質問への回答を自動化することができるため、スタッフの業務負担が軽減されるとともに、顧客満足度の向上も期待できます。

内見

・VR・AR
 WEBやアプリ、体験ブースなどで仮想現実(VR)や拡張現実(AR)を利用したサービスです。例えば、VRの導入により現地に出向かなくても物件の疑似内見ができたり、ARの導入により間取りに合わせて家具やインテリアのレイアウトをシミュレーションしたりすることができます。

契約

・ローンシミュレーションサービス
 WEB上で、現在の年収からの借入可能額、毎月の返済額や返済回数、借り換えメリットなどが商品ごとにシミュレーションできるサービスです。AI(人工知能)による融資審査の事前診断や、不動産投資プランのシミュレーションができるサービスもあります。

・IT重説と電子書面の交付
 IT重説は、インターネット等を利用して対面以外の方法で重要事項説明等が受けられるサービスです。電子書面の交付は、重要事項説明書等、契約書類の電子化サービスです。前者は本格運用がスタートし、後者は国土交通省による社会実験がスタートしました。賃貸取引と売買取引で取り組み状況が異なりますので、詳しくは国土交通省のページで確認して下さい。

宅建業法にかかるITを活用した重要事項説明等に関する取組み
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000092.html

その他

・価格査定
 過去および公開中の取引データ、周辺情報などをAI(人工知能)が解析して、適正な取引価格や相場、将来見通しなどを査定するサービスです。通常の査定は現地で行ないますが、AI(人工知能)による査定はデータ上で行なうためリアルタイムでの価格算出が可能です。

・IOTサービス
 AI(人工知能)カメラやIOT(Internet of Things/モノのインターネット)センサーによる見守りサービス、IOT家電(スマートリモコン、スマートスピーカー、ロボット掃除機など)のリモート操作による室内環境制御・調整サービス、鍵のIOT化(通信・認証・制御機能を備えたスマートロック)による入退室管理サービスなどがあります。

・クラウドファンディング
 ここでいうクラウドファンディングとは、WEB上で、不特定多数の投資家から資金調達を行って不動産を購入する「不動産投資型クラウドファンディング」サービスです。不動産特定共同事業法にもとづく電子取引業務になります。

・シェアリングサービス
 不動産系シェアリングサービスは、WEB上で、自宅やオフィスなどの空きスペースを仲介する「スペースシェアリングサービス」です。コロナ禍で影を潜めてしまいましたが、民泊仲介サイトの「Airbnb(エアビーアンドビー)」は代表的な不動産系シェアリングサービスです。

 

最後に

 2018年11月に矢野経済研究所が発表した調査結果によれば、国内不動産テック市場規模は、2020年度には2017年度比64.1%増の6,267億円に拡大すると予測されました。そのうち、消費者向けサービスは2017年度比43.8%増の4,252億円、事業者向けサービスは同134.0%増の2,015億円の拡大が予測されました。もっとも、上記数字は不動産テック市場全体の数字であり、前述した数あるサービスのいずれもが等しく拡大しているわけではありません。発表当時も、消費者向けサービスで最も高い成長が見込まれているのは、誰もが一番イメージしやすい「不動産仲介サービスにおけるマッチング市場」と考えられていました。コロナ禍の影響がその後の数字にどの程度表れてくるは分かりませんが、当協議会が会員事業者および関係事業者にヒアリングをした限りでも、多くの事業者がテレワークを導入しているようです。今後はテレワークの導入による、出勤者削減後の労働生産性の維持と、非対面・非接触の接客に伴う業務効率化の両方を満たすテクノロジーが優先的に普及していくのではないでしょうか。
 コロナ禍によって不動産取引のオンライン化はますます必要に迫られていくと予測されますが、事業者の労働生産性の維持と業務効率化を目的としたサービスの導入であっても、消費者のニーズを見失ってはなりませんし、消費者を置き去りにするレベルであってもならないと思います。不動産取引のオンライン化が事業者の成長を後押しするものであると同時に、消費者にとって安全・安心な取引を実現し、情報の信頼性と透明性の高い不動産市場につながることを期待します。