あんしんを、あたらしく。~一般社団法人安心R住宅協議会~

2020.06.15

不動産の相続時、評価額と時価に差がある場合はどうしたら良い?

相談者
先月に父が亡くなり、相続の手続きを進めています。高齢の母を引き取って、実家を売却することにしました。相続税の申告に必要な不動産評価額と売却にあたって不動産会社に査定してもらった金額が、あまりにかけ離れている(評価額の方が高い)ので、驚きました。どうしたら良いでしょうか?(埼玉県 50代)

 
回答者
 こんにちは。安心R住宅推進協議会の三津川 真紀です。

 
相続税評価額が不動産会社の査定額(実勢価格)よりも高く算出されてしまうということは、それだけ相続税額も高く影響されるのではないかと心配ですよね。ここでは、ご相談の内容について、相続税額を算出する上で不動産はどのように評価されるのか。そして、実際に売れるであろう価格となぜ乖離してしまうのかについてお伝えしたいと思います。

 
 まず、相続税額は、故人の財産を取得した人ごとの課税価格の合計額から、基礎控除額を差し引いた課税遺産総額をもとに算出されます。財産評価は、この課税価格を算出するための方法です。

 
 次に、不動産が課税価格を算出する上でどのように評価されるのかについては、その不動産の種類や利用状況によってことなります。土地なのか家屋・建物なのか(種類の別)、家屋・建物の場合は、故人が利用していたのか第三者に貸していたのか(利用状況の別)。ご相談のケースは実家の相続ですので、土地および自己利用の家屋・建物になり、それぞれ評価する必要があります。

 
 財産評価は時価(実勢価格)が原則です。ところが、不動産会社の査定額はおおよそ3ヶ月を目途に売れるとされる市場価格であるのに対し、財産評価の基礎となる時価は別の基準で算出されます。この基準は、毎年1月1日の市場価格を基準としている「公示地価」を基礎として算出されています。(詳細を知りたい方は、最後の補足をご覧ください)

 
 ここで注意しなければならないのは、ご相談のケースが新型コロナウイルス(以下、コロナ)の影響下で行われる不動産相続だということです。くり返しになりますが、不動産の相続税評価額は、毎年1月1日時点の市場価格を基準としている「公示地価」を基礎としています。

 
つまり今年の1月1日時点の市場価格には、コロナによる影響が一切加味されていないのです。そのため、現時点では不動産の相続税評価額にコロナの影響による不動産価格の下落は反映されていません。相続税額の算出にあたって、これらの価格と実際の市場価格が乖離していれば、当然に取引の実態にそぐわない割高な相続税を課されてしまう可能性が出てくるわけです。

 
 この時、土地の財産評価にあたって、今年の1月1日時点の市場価格を基礎として算出にされた評価額(みなし時価による評価額)が、評価時点における市場価格(本来の時価)を大きく上回る場合には、必ずしもこの算出方法での評価額で申告しなくても良いとされています。

 
評価額と市場価格の乖離が、通達によりがたい「特別の事情」としてみなされると、他の合理的な方法による評価が認められます。ご相談のケースにおいては、いかに当該不動産に、この「特別の事情」が存在しているかを証明することが極めて重要になります。「特別の事情」の証明については、査定を依頼した不動産会社に相談してみるのが良いでしょう。
 
 

補足 
財産評価の基礎となる時価について
土地であれば「相続税路線価」(路線価のない市街地以外の土地については固定資産税評価額)、家屋・建物であれば「固定資産税評価額」になります。

財産評価の基礎となる時価についてもう少し詳しくお伝えすると、「相続税路線価」は国税庁が毎年7月に発表しますが、これは国土交通省が毎年3月に発表する「公示地価」の約8割の水準とされています。一方、「固定資産税評価額」は毎年1月1日時点に土地あるいは家屋・建物を所有する人に対して課される固定資産税の基準価格で、市町村が3年に一度発表しますが、これは「公示地価」の約7割の水準とされています。つまり、不動産の財産評価でいう時価(実勢価格)は、毎年1月1日時点の市場価格を基準としている「公示地価」を基礎とした路線価、評価額を、それぞれ「時価とみなして」算出しているのです。

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