相談者
先月中にリフォーム工事が完了する予定だった中古住宅を購入しました。ところが不動産会社に、コロナの影響でトイレとドアの設置が遅れていますが、引き渡しの後、届き次第すぐに設置しますといわれました。どういうことでしょうか?(福井県 40代)
回答者
こんにちは。安心R住宅推進協議会の三津川 真紀です。
トイレもドアもない家が引き渡される、あるいは工期が延びて予定通りに引き渡しがされないなど、新型コロナウイルス(以下、コロナ)の影響で住宅設備の納品が遅延したり、建築やリフォームの工期が延長したりするケースが出てきました。ここでは、ご相談の内容について、コロナによって引き起こされた建物の引き渡しにまつわる問題の対応策についてお伝えしたいと思います。
建物売買契約を交わすと、売主である不動産会社は建物の引渡債務を負い、買主であるご相談者様は購入代金の支払債務を負います。つまり、引き渡しがされないということは、売主の債務不履行に当たります。通常、売主・買主のいずれかに債務不履行があると、相手方は遅延損害金の賠償請求をするか、契約を解除した上で違約金を請求するか、いずれかの方法をとることができます。ところが、債務不履行に至った原因が、売主・買主どちらの責任でもない場合(債務者に帰責事由がない場合)、相手方は遅延損害金や違約金の請求をすることができません。ご相談のケースは、まず今回のコロナが、この帰責事由に該当するかしないかということが問題になります。結論からいえば、コロナによる影響は帰責事由に該当しない「不可抗力」であり、売主は遅延損害金等の負担を負いません。
一方この時点で、リフォーム工事を請け負った施工会社には、納品が遅延している一部の住宅設備を除いた購入費用や、工事に従事した職人に対する報酬の支払債務が発生しています。買主にこのまま引き渡しができず、残金を受け取ることができなければ、最悪は事業の継続が危ぶまれます。
そこで国土交通省は、こうした事態への対応策として、2月27日付で「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う建築設備の部品供給の停止等への対応について」という通知を出しました。
この通知は、コロナの影響により建材・設備の部品供給が滞り、納品が遅延し、工期が延長した場合に、一部の部品が未設置の状態で工事を完了させても、それが軽微な変更であれば、個別の申請者からの相談に応じて速やかに完了検査を実施することを要請するものです。つまり、建築工事の場合、施工会社がコロナの影響により建材・設備の部品を調達できない「不可抗力」が生じた場合は、すべての部品供給が間に合わなくても、速やかに完了検査を受け、当該住宅を「工事が完了した住宅」として扱えることになります。
ご相談のリフォーム工事を施した中古住宅についても、コロナの影響により建材・設備の部品を調達できず、一部の部品を除いて引き渡しがされる、あるいは引き渡し自体が遅れる場合は、同様の解釈が成立しそうです。
ただしいずれの場合も、その原因がコロナによるものであることを明記した上で、未設置の部品の納品状況や建物の引き渡し時期などについての定期的な報告・連絡を求める書面(覚書や合意書など)を、不動産会社等と必ず交わしておくようにして下さい。