あんしんを、あたらしく。~一般社団法人安心R住宅協議会~

売主の皆様へ

ホームスキャ®を行なう意義と必要性

ホームスキャン®とは建物状況調査の概念を表した当協議会の造語で、「建物(ホーム)を細かく調べる(スキャンする)」という意味です。
ホームインスペクション(住宅診断)と同義になります。
建物に精通したホームインスペクター(住宅診断士)が、「透明性」や「中立性」を確保する観点から、専門的および第三者的な立場で住宅の劣化状況についての検査を行ない、瑕疵(欠陥や不具合等)の有無、補修すべき箇所やその時期、おおよその費用などを見きわめ、安全・安心な取引と住生活の実現に寄与するアドバイスを行なうものです。

 

 
これまでは「買主」が既存住宅を購入する際の意思決定のために自らの費用負担で行なうことが多かったホームスキャン®(広義の建物状況調査)ですが、最近は「売主」が行なうケースも増えてきました。
理由は大きく二つあり、一つは売主自らホームスキャン®(広義の建物状況調査)を行ない、その結果を公開することで、買主に安心して購入してもらうこと、もう一つは取引前に住宅の劣化状況を把握しておくことで、取引後のトラブルを未然に防ぐことです。
既存住宅の商取引においては「売主が宅建業者の場合」と「売主が宅建業者以外(個人間売買)の場合」、いずれも売主は瑕疵担保責任を負います。
長らく不動産流通市場は事業者本位で成り立ってきたため、既存住宅の商取引においても消費者は常に不安や負担を強いられてきました。
そのため、住宅の瑕疵(欠陥や不具合等)についても、「売主が責任を負うのが当たり前」だとする慣習がありました。
「売主」がホームスキャン®(広義の建物状況調査)を行なう必要性は、取引時点の建物の現況を売主・買主が相互に確認し、双方が安心、納得して商取引を行なうこと、取引後に買主から瑕疵担保責任の追及を受ける可能性を防ぐことなどにあります。
なぜなら万が一取引後にその住宅に瑕疵(欠陥や不具合等)が見つかった場合、多くは紛争に発展し、結果、売主・買主双方にとって多大な不利益をもたらすことになるからです。
紛争に発展する要因の一つは、瑕疵(欠陥や不具合等)が通常の注意では気がつかない「隠れた瑕疵」である場合が多く、発見が遅れがちなことです。
こうした取引後のトラブルはホームスキャン®(広義の建物状況調査)を行なうことで、かなりの確率で未然に防ぐことができます。
「売主」が「取引前」にホームスキャン®(広義の建物状況調査)を行なうことで、「隠れた瑕疵」の早期発見につながり、必要な補修、設備とおおよその費用などを反映した安心で確実な査定が可能になるのです。
さらにホームスキャン®は既存住宅売買瑕疵保険に加入できるかどうかを判断する根拠にもなります(狭義の建物状況調査)。
既存住宅売買瑕疵保険は既存住宅の検査と保証がセットになった保険制度で、万が一引き渡しを受けた建物の保険対象部分(構造耐力上主要な部分、雨水の侵入を防止する部分等)に瑕疵が見つかった場合は、その補修費用を保険でまかなうことができます。
加入するには既存住宅状況調査技術者(国土交通大臣の登録を受けた既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士)が既存住宅状況調査方法基準にもとづいて実施する検査に合格しなければなりません。
ホームスキャン®(広義の建物状況調査)は、既存住宅が消費者の納得と信頼を得て安全・安心に取引されるための入口となるものなのです。

 

既存住宅の適正な評価と査定の実現に向けて

 
既存住宅を売却しようとする際、「査定価格」と「売却期間」は売主にとって一番の関心事です。
“より高く”“より早く”売りたいというのは売主であれば当然の心理ではないでしょうか。
それでは既存住宅の「査定価格」はどのように算出されているのでしょうか。
通常、既存住宅の査定は、不動産流通事業者(宅建業者)が行なう場合がほとんどです。
不動産流通事業者は既存住宅の売却依頼を受けると、査定価格を算出するために、その住宅の状況について実際に現地にて調査し確認するとともに、売主から売却理由やリフォーム履歴、住まい勝手など、その住宅に関する情報をヒアリングします。
この時、周辺に既に取引が成立している類似の住宅があれば、その取引価格(売却価格)に現地調査の結果を加味して調整し、更にヒアリング内容や当該住宅固有の資産価値を考慮して算出します。
注意しなければならないのは、査定を行なう不動産流通事業者は「流通(売る・買う・運用する)のプロ」であって、「建築(造る・建てる)のプロ」ではないということです。
既存住宅は、建物の仕様や設計、売主の住まい方や住宅履歴情報が個々の住宅によってさまざまです。
個々に異なる状況を調査して適正な査定価格を導くことは、建物の知識に乏しい不動産流通事業者にとってはいささか無理があります。
日本でこれまでホームスキャン®(広義の建物状況調査)が当たり前に行なわれてこなかった要因は、不動産流通事業者が建築のプロではないことも一つといえるでしょう。
既存住宅の適正な評価と査定は、「建築のプロ」がその住宅の状況について隈なく調査し(ホームスキャン®)、その結果を公開するとともに、「流通のプロ」がその住宅の流通性(市場価値)を判断して最終的に導かれるものであり、この両者のアプローチが合わさってはじめて、透明で中立的な不動産流通市場が実現されます。
今後は法改正の後押しもあって、不動産流通市場への相互参入や事業提携は業種・業態の垣根を超えてますます加速するでしょう。
「流通の分かる建築のプロ」や「建築の分かる流通のプロ」が登場し、消費者にとって信頼できる事業者が増えることを期待します。

 

安心な既存住宅の流通を促進するために

ホームスキャン®は建物状況調査のことですので、ホームスキャン®を行なっただけでは既存住宅の評価や査定価格は上がりません。
評価や査定価格を上げるには、ホームスキャン®(広義の建物状況調査)で明らかになった住宅の劣化状況についての改善を図り、あるいは付加価値をつけるなどして、より安心で良質な住宅として再生する必要があります。
ところが既存住宅の査定を行なう不動産流通事業者は「建築のプロ」ではないため、せっかくホームスキャン®(広義の建物状況調査)を行なっても再生できない場合が多いのです。
ホームスキャン®(広義の建物状況調査)も、本来は、建物に精通したホームインスペクター(住宅診断士)が住宅の劣化状況についての検査を行ない、アドバイスをするものですので、建築士あるいはそれと同等以上の能力と実務経験をもつ者が行なうことが望ましいでしょう。
このことから、建築士をはじめとする「建築のプロ」と宅建業者をはじめとする「流通のプロ」が一体となって、既存住宅の調査(ホームスキャン®)、再生(リフォーム)、評価(査定)、流通(販売)を一貫して対応することが、既存住宅の資産価値を上げる近道なのかもしれません。
一方、日々多くの既存住宅が取引され、成約に至っていますが、売れ残ってしまうケースも珍しくありません。
価格や立地、間取り、品質など、売却期間が長期化する理由は個々の住宅によってさまざまですが、一言で表せば“魅力に欠ける住宅”であるからだといえるでしょう。
買主に選ばれる魅力的な住宅とは、「安全・安心で快適な暮らしが実現できる住宅」です。
“既存住宅を適正に評価し、魅力的な既存住宅の流通を促進するために”
当協議会の会員は、ホームスキャン®(広義の建物状況調査)の結果にもとづいた査定、維持管理やリフォームのプランの作成、保証やサービスの提案を徹底し、売主・買主双方に透明で中立的な取引をお約束します。