国土交通省ではこれまで、良質な住宅ストックの活用を図るため、長期優良住宅や住宅性能表示、住宅瑕疵保険、インスペクション、住宅履歴等、住宅の性能の確保や客観的な評価に関するさまざまな制度整備を進めてきました。
「良質住宅ストック形成のための市場環境整備促進事業」は、これらの制度を活用し、維持管理やリフォームの実施などによる住宅の質の維持向上が市場において適正に評価されるような、住宅ストックの維持向上・評価・流通・金融等の一体的な仕組みの開発・普及等に対して支援するものであり、2016年度から行なわれています。
現在の住宅市場は、良質な住宅ストックが適正に評価されず、維持管理やリフォームを行なうインセンティブが働かない悪循環構造にあります。
そこで、このような取り組みに対する支援を行ない、良質な住宅ストックが適正に評価される市場の好循環を生み出すことが求められています。
この取り組みにより、「良質な住宅が適正な価格で流通する市場の整備」、「住宅の維持管理やリフォームの促進」、「住宅資産の有効活用の促進」、「ライフステージに応じた住み替えの促進」等、多くの成果が期待されています。
秋田支部は本事業の採択協議会等として、2016年度から「住宅ストックを活用した秋田まちなみ再生プロジェクト」に取り組んでいます。
既存住宅の資産価値を建物の性能(ハード)のみで評価するのではなく、住まい勝手(ソフト)をはじめ、デザイン、住まう人のニーズ(嗜好やライフスタイル)、地域性など、消費者の購買決定に影響を与える選択条件をあらゆる側面から反映した、新たな既存住宅の評価手法を開発しました。
秋田支部ではこの評価手法を用いて、秋田県における「既存安心住宅®」(秋田既存安心住宅)を認定します。
秋田既存安心住宅の評価項目および評価基準の策定にあたっては、秋田県の気候風土や地域性を十分に加味したことで、本プロジェクトはその地域での住まいと暮らしの実情に即した住宅再生・循環モデルとなっています。
富山支部は本事業の採択協議会等として、2016年度から「買取優先権付き住宅の販売による持ち家化推進プロジェクト」に取り組んでいます。
既存住宅の流通を促進するには、第一に購入時のハードルとリスクを軽減する必要があります。
「買取優先権付き住宅®」は、頭金や与信などの問題で住宅購入がすぐには難しい賃貸住宅の入居者を対象として、その賃貸住宅に「将来の買取優先権」を設定し、持ち家の取得を特に金融面から後押しする商品です。
「将来の買取優先権」を設定する賃貸住宅を、富山県における「既存安心住宅®」(富山既存安心住宅)として認定されたものに限ることで、「買取優先権付き住宅®」が将来世代に継承できる良質な既存住宅であることを証明します。
また、賃貸住宅であっても、将来の持ち家として愛着を持って住んでいただくことで、入居前のリフォームに入居者の要望がより反映しやすくなること、入居後の定期的な点検や修繕の必要性がより理解されやすくなることなどが期待され、もって良質な既存住宅の活用と流通に貢献します。
本プロジェクトを、若年世帯・子育て世帯あるいは地方移住者に対する住宅取得支援策の一環として位置づけ、地域金融機関や地方公共団体とともに推進しています。
熊本支部は本事業の採択協議会等として、2017年度から「住宅ストックの活用によるエリアコミュニティ復興プロジェクト」に取り組んでいます。
2016年4月に発生した熊本地震以来、地方公共団体や復興支援団体らとともに、「地域コミュニティを基点とした復興まちづくり」についての議論を進める中で、特に「住宅ストックを活用した地域協働によるまちづくり」に対する関心が多く寄せられました。
そこで、被災地にある既存住宅の安全・安心性を証明するため、地方公共団体の復興計画、対象地域の特性と課題、被災者のニーズなどを踏まえた、被災地における新たな既存住宅の評価手法を開発しました。
熊本支部ではこの評価手法を用いて、熊本県における「既存安心住宅®」(熊本既存安心住宅)を認定します。
熊本既存安心住宅の評価項目および評価基準の策定にあたっては、個々の住宅の被害状況のみを注視するのではなく、地域住民等との合意形成を重視したエリア(ユニットの集合体)としての復興や活性化までをイメージした仕組みづくりとして取り組むことで、安全・安心な既存住宅の評価・流通を被災地の復興に繋げます。