あんしんを、あたらしく。~一般社団法人安心R住宅協議会~

2020.03.15

不動産の相続放棄をしたら、空き家の管理義務もなくなる?

相談者
一人暮らしをしていた母が亡くなり、田舎の実家を相続することになりました。この先帰る予定もなく、相続を放棄したいのですが、放棄する際に注意することはありますか?(埼玉県 60代)

 
回答者
 こんにちは。安心R住宅推進協議会の三津川 真紀です。

 

 ご相談者様だけでなく、近年、実家の相続にお悩みの方が大変増えています。全国的にみても、適切な管理ができずに廃墟化していく空き家の数は急激に増えており、社会問題となっています。不動産は他の財と異なり、管理するにも処分するにも難易度が高いため、他の相続財産が債務超過していたり、他に相続する財産がないといったケースでは、相続放棄を検討する方も少なくありません。ここでは、田舎の空き家を相続放棄する際の注意点についてお伝えしたいと思います。

 まず、相続とは、プラスの財産だけでなく借金などマイナスの財産も引き継ぐことであり、相続放棄とは、故人(被相続人)の残した一切の財産を放棄することです。そのため、引き継ぐ財産を取捨選択することはできませんので注意しましょう。相続放棄の手続きが受理されると、「そもそも相続人ではなかった」という扱いになるため、他の相続人との協議に参加する必要などもなくなります。

 不動産(ご相談のケースは実家の空き家)を含む全ての相続財産を考慮しても相続放棄することを決めたら、早めに家庭裁判所で相続放棄の手続きを行ないます。早めに行なう理由は、相続を放棄するには「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に手続きを済ませる必要があるからです。

 相続放棄の手続きが受理され相続人でなくなれば、放棄した不動産の所有者となる可能性もなくなりますし、所有者が支払う固定資産税の支払い義務などもありません。ところが問題は、相続を放棄さえすれば、その不動産を管理する必要も一切合切なくなるのかということです。

 結論からいえば、相続を放棄しても相続人であった者は、別の相続人が相続するまで、あるいは相続財産管理人が選任されるまでその財産を管理する責任を負い続けます。つまり、所有権はなくても管理だけはしなければなりませんので、手間と費用がかかることになるのです。もし仮に管理までを放棄し、そのことが原因で何らかの事故が起きた場合は、管理者は管理責任を問われ損害賠償請求を受ける可能性もあるので看過できません。

 それでは、相続人の全員が放棄し、相続する者がいなくなったら、その不動産はどうなってしまうのでしょうか。民法は、相続人不存在となった場合に、相続財産は法人化し、相続財産管理人の選任がなされると規定しています。選任された相続財産管理人は相続財産の清算等を行ない、残った財産を国庫に引き継ぎます。つまり最終的には国が管理していくことになるわけです。

 ところが、ご相談のケースのような空き家は、国がほとんど引き取ってくれません。相続放棄される不動産の多くは売れない不動産ですから、国も欲しくはないからです。こうなると、相続放棄はしたものの、相続財産管理人の業務がいつまでたっても終了せずに、相続財産管理人に対する報酬を払い続けることになります。この間、不動産の管理責任だけは負い続けることを考えますと、所有に伴う固定資産税などの負担がないとはいえ、管理費用と相続財産管理人に対する報酬の負担は免れないわけです。

 つまり、相続放棄は、単体の財産だけを考えて決定するのではなく、総合的に判断すべきであり、その結果、相続財産がマイナスでなければ(負債がなければ)、管理の手間や処分の難しさを考慮しても相続した方が良いケースもあるので、対策方法は慎重に検討すべきでしょう。

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