あんしんを、あたらしく。~一般社団法人安心R住宅協議会~

2020.02.15

建設中のマンションで引き渡し前に地震が起きたら?

相談者
建築中のマンションを契約したのですが、最近地震や台風が多くて心配です。もし引き渡し前に大規模な災害が発生したら、どうなるのでしょうか?(千葉県 30代)

 
回答者
 こんにちは。安心R住宅推進協議会の三津川 真紀です。

 建築中の分譲マンションを購入した場合、完成引き渡しの前に自然災害による被害を受けて、マンションに損傷が発生すると、その損傷を補修するのは売主と買主、どちらの負担になるのか?万が一、補修できるレベルにない損傷を受けた場合は、契約を解除できるのか?など、不安はつきませんよね。ここでは、建築中のマンションが引き渡し前に自然災害による被害を受けたら、補修や再建築の費用は誰が負担するのかについてお伝えしたいと思います。

この問題は「危険負担」といいます。文字通り、「リスクをどちらが負担するのか」ということですが、ここでいうリスクは、自然災害や火災、第三者による破壊など、売主・買主どちらにも責任がない場合です。

 まず原則として、2020年4月1日以前の民法では、売主・買主どちらの責任でもない損傷が発生した場合、引き渡し前であっても、その負担は買主が負うものとなっています(危険負担の債権者主義)マンションのような特定物の引き渡しは、現状における状態での引き渡しで足りることになっているため、たとえ地震によって引き渡し前に倒壊したとしても、買主は代金を支払わなければなりません。ただし、それでは買主があまりに一方的に不利になってしまいます。

 そのため、2020年4月1日以前の売買契約では、基本的には「売主がリスクを負担する」という取り決め(特約)を交わすことが一般的です。

 具体的には、
1.引き渡し前に、売主・買主どちらの責任でもない事由によって物件が「滅失」した場合は、買主は契約を「解除」することができる。
2.引き渡し前に、売主・買主どちらの責任でもない事由によって物件が「毀損」した場合は、売主は「修復」して買主に引き渡さなければならない。
3.2の時、売主が誠実に「修復」を行なった結果、買主への引き渡し期日を超えたとしても、買主はその「延期」について異議を述べることはできない。
4.2の「修復」が著しく困難な時、あるいは「修復」に過大な費用を要する時は、売主は契約を「解除」することができる。
5.2の「毀損」により、契約の目的が達せられない時は、買主は契約を「解除」することができる。
6.1、4、5の「解除」の時は、売主は売買代金など受領済の金員(金銭)を、無利息で遅滞なく買主に「返還」しなければならない。
といった特約条項を記載します。

 しかしながら、あくまでも取り決め(特約)は義務ではなく任意のため、何の取り決め(特約)も記載されていない契約書の場合は、すべて民法の原則にしたがって買主負担となってしまうことから、事前に契約書(約款)を細かく確認するなど、相当の注意が買主に求められます。

 ご相談の内容につきましては、まずはお手元の契約書(約款)に、「引き渡し前の滅失・毀損に関する規定」(危険負担に関する規定)が記載されているかどうか、今一度確認して下さい。そしてその内容について、一つは売主がリスクを負担するようになっているか、もう一つは滅失・毀損の原因が限定されていないか(ご相談のリスクが滅失・毀損の原因に該当するか)、特に確認して下さい。

 最後に、前述の民法の規定は2020年4月1日以降に改正され、「危険負担」は民法上も売主が負うことになります。引き渡し前に、売主・買主どちらの責任でもない事由によって債務を履行することができなくなった場合は、買主は代金の支払いを拒むことができ、また、買主は契約を解除することによってその債務を消滅させることができます。ここ数年は毎年のように大規模な自然災害が発生し、関連するトラブルも増えていることから、万が一の事態に備えて、契約内容については事前にしっかりと確認してから契約に臨むようにして下さいね。

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