あんしんを、あたらしく。~一般社団法人安心R住宅協議会~

2020.02.01

【コラム】金融機関による住宅資産の評価方法と住宅金融のこれから

金融機関による住宅資産の評価方法と住宅金融のこれから

既存住宅を購入する際、果たして住宅ローンは新築住宅と同様に組めるのか、そもそも金融機関による住宅の担保評価とはどのようなものなのかといったことは、これから既存住宅の購入を検討しようとする方にとっては気になるところだと思います。
金融機関では、個人に融資する(お金を貸す)商品全般を「ローン」と呼んでいます。ローンは、決められた審査基準を満たす個人に、決められた条件(金利や期間)で融資する「企画商品」です。住宅に限らず、マイカーや教育資金などのローンについても同様ですので、一生のうち一度は金融機関のローンを利用するという方は少なくないのではないでしょうか。

そこで今回は、安心R住宅推進協議会 三津川真紀が、元北陸銀行の融資担当責任者で、現在は独立系中小企業診断士である、エントライズ・マネジメント社長 野村幸司さんに「金融機関による住宅資産の評価方法と住宅金融のこれから」についてお話を伺いました。

なぜ金融機関は既存住宅の融資に厳しいのか

三津川:まず、住宅ローンの審査基準には、どういったものがあるのか教えて下さい。

野村:2016年に国土交通省が民間住宅ローンの審査基準について調査した報告書があるので、そちらをもとにお話しします。その内容(どんな項目があって、それぞれどういうレベルか)ですが、最も多く採用されている基準は「完済時の年齢」です。回答した金融機関のおよそ8割が「80歳未満」と答えています。興味深いのは、「70歳未満」と答えた金融機関よりも「85歳未満」と答えた金融機関の方が多いということです。それだけ高齢で完済するケースを想定しているということでしょう。

次に「健康状態」です。万が一契約者様が返済途中でお亡くなりになられた場合、残金を保険金で一括返済する必要があるため、団体信用生命保険に加入することを条件としている金融機関が1000行以上となっており、回答した金融機関の9割を超えています。
同点の「借入時の年齢」は、「60歳以上70歳未満」とした金融機関が全体の3割を占めていますが、「75歳未満」と答えた金融機関も189行(13.2%)あることは驚きです。

さらに「担保評価」と「勤続年数」が同点で続きますが、意外なのは「年収」や「連帯保証」はさらに次点ということですね。もちろん重要な審査項目ではあるのですが、何よりもまず年齢や健康状態をみるということで、高齢社会を反映しているのでしょう。

一方、最近では若年層の住宅購入も増えておりますが、融資を受ける場合は勤続年数が1年未満であったり、年収が150万円未満では難しいところが多いようです。そのため、保証会社の保証を条件としているところがほとんどで、多くは系列保証会社の保証を必須としています。信金さんであれば、しんきん保証基金といったところですね。

三津川:たくさんの審査項目から総合的に判断しているんですね。

野村:他にもまだありますよ。年間の返済額が契約者様の年収に占める割合である「返済負担率」も重要です。「35%以内」とする金融機関が最も多いのですが、実際に返済負担率35%で融資を受けられると、結構支払いがキツイと感じられると思います。関連して、審査基準ではありませんが、年収に対する借入額の目安は、一般的に6倍とされているようですね。年収の6倍までなら借りても大丈夫ということなのでしょう。

また、「返済負担率」よりは考慮される割合が下がりますが、「融資率」というものもあります。これは借入額が購入する物件の価格に占める割合をいいます。「100%以内」とする金融機関が最も多いので、物件価格全額をローンで組む(フルローン)場合を想定しているのでしょう。購入に対して、借り換えの場合の融資率は、「200%以内」とする金融機関も多いようです。

三津川:審査基準はあくまでも融資を受けられる方の基準ですが、一方で金融機関は、例えば資産価値が3000万円の住宅の場合、どのように融資額を決めているのでしょうか。

野村:それにつきましては、あくまでもその住宅を担保としてみた場合の評価をすることになりますね。厳しい言い方になりますが、万が一その住宅を売りに出した場合に、金融機関にどのくらいの金額が戻ってくるのかということが基準になるということです。
通常の売却であれば不動産会社に依頼するでしょうし、競売であれば裁判所で手続きをすることになります。その時発生する利息や仲介手数料などの諸費用は、売った金額から差し引くことになります。そうすると、その住宅の実際の担保価値は、相場の7~8掛けとなるわけです。つまり、金融機関が住宅を担保として貸せる金額も、その住宅の価格の7~8割が上限となります。

三津川:なるほど。「相場」という話が出てきましたが、金融機関は住宅価格の相場についてはどのようにみているのでしょうか。

野村:先ほども申し上げました通り、前提として金融機関は、住宅の価値を、住宅価格の「相場」ではなく、「貸したお金分の価値」としてみています。つまり金融機関は、あくまでも住宅の「担保価値」と融資との関係性においてでしか判断しません。誤解を恐れずにいえば、金融機関はお金になって初めてなんぼという立場なので、そのあたりがお話のテーマである「なぜ金融機関は既存住宅の融資に厳しいのか」というところにもつながってくるように思います。

ただ問題は、担保価値を換金価値として判断するのであれば、担保価値を算出する際のベースとなる住宅価格の「相場」は市場の「実勢価格」であるべきなんですが、金融機関は不動産のプロではないため、実勢価格を独自に算出することが難しいんです。
そのため、土地については、路線価(路線価がない地域は、固定資産税評価額)に面積(固定資産税評価額の場合は、一定の倍率)を掛けたものをおおよその相場とみなしたり、近隣の売買価格を参考にしたりしています。建物については、基本的には原価法(再調達原価×延べ床面積×残存耐用年数÷法定耐用年数)を用いて算出しますが、分譲マンションのように取引事例の多い不動産の場合は、取引事例比較法もあわせて用います。住宅ローンとは関係がありませんが、賃貸アパートのような収益物件には収益還元法を用います。

金融機関はこのように、原価法や取引事例比較法に類似する方法で、その住宅価格の「相場」を算出しています。もちろん厳密には、不動産鑑定士に依頼して鑑定評価額として出して頂く方法もありますが、費用がかかるため、すべてに依頼することは難しいのです。

金融機関による既存住宅の評価

三津川:金融機関は今後どのように既存住宅を評価していくべきだとお考えですか?

野村:建物の法定耐用年数は、木造で22年、鉄筋コンクリート造(RC造)で47年と定められています。建物の評価額は築年数の経過に伴って下がりますから、木造住宅の場合は築年数が22年を超えると評価額がゼロになるということになります。つまり、法定耐用年数をベースに評価している限りは、築年数が20年以上の建物は実質、評価できないのです。
したがって、既存住宅を評価するにあたっては、建物の耐用年数をベースに、鑑定評価手法に類似する方法により算出した担保価値(金融機関による評価額)と、その住宅の市場価値(実勢価格)との差が、なるべく小さくなるような調整ができるようになれば良いのではないかと考えます。

よく、「社長は4年落ちの中古ベンツを買え」などといわれますが、なぜだか分かりますか?それは、より多くの金額をできるだけ早く費用として処理できるからです。車を新車で購入した場合は、その購入金額を6年で按分して費用処理するよう定められているのですが、ベンツは4年経ってもそれほど価値が下がりません。つまり、同様のことが既存住宅にもいえるのではないかと思うのです。
例えば、新築時に3000万円だった住宅の担保価値が、築11年経って半値の1500万円になった場合、現行の融資では1500万円しかおりません。しかしながらこの物件は大規模なリフォームをしており、市場価値は2500万円あったとします。この時、築11年経過していても、担保価値は2000万円までで下げ止まり、さらにリフォーム費用として500万円かけているので、あわせて2500万円まで融資できますよといったことが可能になれば、金融機関としても理にかなっていると思うのです。

こうした提案ができるように、事業者や消費者が持っている数多くの事例やエビデンスが金融機関と共有されると、お互いにとってスムーズな取引が実現するのではないかと思います。もちろんそのためには、金融機関が意識を変える必要がありますが。

住宅金融のこれから

三津川:今後の住宅金融について、期待することなどはございますか?

野村:銀行員は一般的にとても信頼されている立場ですが、実際に窓口へ相談しに行くと、大した理由も示されないままお断りされるケースも少なくないようです。日頃より丁寧な接客を心がけて、世間からの期待に応えたいものですね。

特に住宅は一生のうちで最も大きな買い物といわれています。金融機関にとっても住宅ローンはメインの商品であり、今後は金融機関ごとに独自性を発揮してラインナップを充実させていく方向にありますから、まずは住宅ローンをはじめとする住宅金融商品の開発と販売に腰を据えて取り組むべきです。
 住宅ローンの販売に手を抜かないことが、口座開設数や預金残高、貸出残高にプラスの影響を与えることを、金融機関は分かっているはずです。

 一方で住宅ローンは、大きな金額を個人が借り入れて、何十年にもわたって返済し続けるわけですから、延滞や滞納など、金融機関が負うリスクも小さくありません。近年は少子高齢化・人口減少の急速な進展に伴って、住宅の需要層の事情にも変化が生じています。その影響で住宅の低価格化が進み、住宅ローンの低金利競争も長期化しています。同時に住宅ローンの返済に窮する方も増えています。
 特に若年層は無理して住宅ローンを組みがちですが、長期にわたる返済期間の途中には経済的な事情が大きく変化する可能性も十分にあり得ることから、絶対に無理な借り入れはしないということが大切だと思います。それには金融機関が、融資を受けられる方の状態や状況に応じた返済能力を正しく見極めるとともに、その住宅の担保価値を適正に評価することが必要でしょう。

そもそも住宅と金融は切っても切れない関係にありますが、今後、既存住宅の取引が増えていく中にあっては、その関係は“適正な評価”という前提の上で、より一層強固なものになっていくと思われます。貴協議会の取り組みの社会的意義もますます高まるのではないでしょうか。

三津川:有り難うございます。既存住宅の資産価値が、金融等と一体として適正に評価され、良質な既存住宅の流通がより一層活性化することを、当協議会としても願ってやみません。