あんしんを、あたらしく。~一般社団法人安心R住宅協議会~

2020.01.30

【コラム】老後資金2000万円不足問題の真偽から考える、資産寿命の延ばし方

 最近話題になった「老後資金2000万円不足問題」。2019年6月に金融庁 金融審議会の市場ワーキング・グループが公表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」の中で、老後資金として2,000万円を貯金から取り崩すことが必要と説明しました。これまでも、証券会社や銀行などの金融機関ではよく「老後は2,000万円必要になりますよ」という話をしていました。メディアでもよく取り上げられていた数字です。しかし、やはり金融庁がこれだけ具体的な数字を出すということが世間の注目を集め、大きな話題となったのです。

 そこで今回は、安心R住宅推進協議会 三津川真紀が、セゾン投信株式会社 代表取締役社長 中野晴啓さんに「老後2,000万円不足問題の真偽」についてお話を伺いました。

 

老後に2,000万円が必要、というのは本当か

中野:今回の報告書は、社会保障の一つである公的年金以外に2,000万円必要ということを示したものです。そもそも社会保障というのは、わたしたちが人権で保障された『最低限の生活』をサポートするためのものであるということを、皆さん忘れているわけではないと思いますが、どうしても「年金2,000万円不足問題」のようにメディアで報じられてしまうと、つい『ひどい話ね』と思ってしまいます。そもそも公的年金だけでみんなが幸せに豊かに暮らせるというのが間違なんです。

 この報告書に書いてあることは端的に言えば、『我々日本の生活者がこれまで享受してきているそれなりに豊かな生活を続けていくには資産運用が絶対に必要だ』ということですよね。

三津川:年金が足りない、というよりは、そもそも社会保障の一つである公的年金は最低限の生活を保障するものであって、それ以上の生活をしたいなら上乗せして自分でお金を貯める必要があるということですね。

中野:さらにいま、老後と呼ばれる期間は伸びています。60歳まで生きている人はこの先何年生きるのかというデータを見てみると、8割の人がこれから80歳まで生きるというデータになっています。これはなんとなく想像できていたと思いますが、さらに見てみると5割、要するに2人に1人は90歳まで生きると言われています。そして1割近い人が100歳まで生きる。2007年生まれの人は平均寿命が107歳になるというデータもあります。もう人生100年時代どころではないかもしれません。

 

長い老後を乗り切るために大切な2つのこと

中野:iDeCo(イデコ)つみたてNISAも非課税投資制度を利用して「長期積み立て投資の実践」という行動を実践していくことが大事です。これによって、わたしたちが思う豊かな生活を送ることは可能になります。

 この2つの非課税投資制度は、金融機関のために作られた制度ではなく、われわれ生活者のために作られた「非常に重要な国策」であるということをご認識いただければと思います。

 またいまは公的年金の制度改革がはじまっていますたとえば厚生年金の受給可能年齢を引き上げるとか、企業型確定拠出年金を70歳まで拠出可能にする、iDeCo(個人型確定拠出年金)は65歳まで拠出できて75歳まで運用可能にすると言う話が出てきています。

 この受け取り開始年齢というのを自分で選べるようになるということです。いまでも70歳からの受け取りにすると、65歳から受け取るときよりも40%以上多くもらえるという仕組みになっています。75歳だと80%以上。要は、政府は70歳以上まで当たり前に現役だっていう社会を作りたいのだと思います。60歳で定年っていう社会は終わりますよ。もう少ししたら80歳を超えてからじゃないと、「おじいちゃん」「おばあちゃん」って呼ばれなくなると思いますよ。これからは少子高齢社会を前提とした社会になっていくと思います。

三津川:そうなると、資産寿命を延ばす必要がありますね。

 

資産寿命を延ばすために今からできること

三津川:資産寿命を延ばす、という言葉を聞いてもピンと来ない人もいると思います。いったいどうしたら資産寿命を延ばすことができるのでしょうか。

中野:資産寿命を延ばすためにやってほしいことは3つです。1つは、現役時代を延ばすことです。たとえば農業生産者や起業家の方は定年はなく、何歳になっても働いている人が多いので、サラリーマンの方も定年後も働くことなどを考え定年後の働き方を考えるなど、意識改革が必要ですね。いくつになっても現役で仕事をし続けるということは、自分が富を生み出す側にずっといられるということです。これはすごく大事なことです。

三津川:現役時代を長くすることで収入を得られる期間が長くなりますよね。

中野:そうです。そして2つ目は、公的年金の改革で受給開始年齢を遅くすることです。遅くすればするだけ、65歳でもらうより多くの年金がもらえるので、受給開始年齢をできるだけ後ろ倒ししてほしいです。

 そして、3つ目は資産運用です。相場で勝負をすることや、短期的に売買をしていく必要はありません。投資行動3原則の「長期」「積み立て」「分散」が大事です。資産運用をするときにはこの3原則を思い出してほしいです。

三津川:分散するというのは非常に大事なことですね。金融資産だけでなく、不動産も重要な資産です。安心して住める場所を確保するという側面もありますし、価値のある資産だという側面もあります。
 ちなみに今回、報告書の中で、「リフォーム市場の活性化や良質な既存受託の資産価値の適正評価を促すことが重要だ」ということがしっかりと書かれていました。

 住宅の資産価値を、金融と一体になって正当に評価していくというのが私たちの仕事です。今までは、正直に言えば不動産会社の人たちが近隣の相場を見ながら感覚的に評価額を決めていました。皆さんの大切な資産の価値なのに。

 高齢者の持ち家比率が高いので、老後2,000万円不足問題を考えるときに不動産の価値を考えないというのはおかしな話です。正当に評価して、既存住宅の流通を活性化させていくことで金融資産だけでなく不動産資産も活用し、資産配分のバランスを取ることが大切です。

 老後2,000万円不足問題に対してわたしたちができることはたくさんありそうですね。