あんしんを、あたらしく。~一般社団法人安心R住宅協議会~

2019.09.20

【コラム】〜自治体主導の街づくりの実態〜立地適正化計画の事例から

こんにちは。安心R住宅推進協議会の三津川 真紀です。

 近年、特に地方都市で起きている中心市街地の空洞化。少子高齢化など、さまざまな要因が影響していますがこの解決のため、国の施策が整備され、自治体主導での街づくり施策が活発になってきています。例えば、「立地適正化計画」です。自治体主導で街づくりをするための施策のことですが、実態はどうなっているのか、みていきましょう。

 

計画公表都市数は、全国の15%に留まる

 「立地適正化計画」とは、公共交通の駅やバス停などの徒歩圏内に「居住を誘導するエリア」を定め、その周辺に「都市機能を誘導するエリア」と「誘導する都市施設」を定めて居住や医療・福祉、商業施設など生活に必要な都市機能を計画的に誘導し、街のコンパクト化を促進するためのものです。2014年8月に施行されました。この計画により、居住誘導区域外で一定の規模より大きい住宅建築を目的とする開発行為等を行おうとする場合や、都市機能誘導区域外で誘導施設の建築を目的とする開発行為を行う場合、事前の届出が必要です。

 街のコンパクト化を推進すれば、郊外に広がった商業・居住エリアから空洞化した中心街に活気を取り戻すことができ、行政サービスの効率化も可能です。ただし、実施が広がっているかというと、まだ限定的です。2019年5月時点で、具体的な取組みを進めている都市が468都市、そのうち250都市が具体的な計画を作成、公表しています。その数は、全国の15%に留まっています。

 

成功例とされる富山市、但し課題も

 具体的な取組みとして、私が仕事でご縁のあった富山市、秋田市の事例をご紹介します。

 富山市は国で立地適正化計画を施行するよりも前の1990年代より検討を開始し、2002年より実際にコンパクトシティ政策に取り組んでいます。2014年の国の施行に合わせて立地適正化計画も取り入れた、全国の中でも先進的な事例です。

 富山市では、中心市街地と中山間地域の人口が減少する一方、その中間部に位置する郊外の人口が増加していたことで、市街地の密度が低くなっていました。市街地が拡散する中、富山市はコンパクトシティ政策に取り組むべき3つの必要性=「高齢者が住みにくい」「インフラ維持更新の財政負担が大きい」「固定資産税の減収が懸念される」という課題に直面しました。

 こうした危機感から、いちはやくコンパクトシティ政策に取組んだことで、2012年にはOECDが世界のコンパクトシティの先進事例を調査した報告書の中でメルボルン、バンクーバー、パリ、ポートランドとともに富山市の事例が紹介されています。

 実際に現地をみてみると、立地適正化計画に合わせてライトレール駅周辺に商業施設ができており、利便性を追求していることがわかります。

 しかし一方で、富山駅前でも商業施設が閑散としているところが散見されます。街の人の話を聞いてみると、富山市内では車移動が中心で、駅前にわざわざ行く必要がない、ということ。公共交通の駅周辺に商業施設を固めても本当に住民に恩恵があるのか、やや疑問です。

 

国の施行に合わせて計画公表した秋田市

 秋田市は国の施行に合わせて立地適正化計画に取組み始めました。

 秋田市でも居住者の減少が進み、労働力低下、経済規模縮小、行財政運営の制約、社会保障費の増大などの課題から、2018年3月の策定、実施へとつながっています。立地適正化計画は市町村別に取組んでいる施策のため、秋田市の場合は公共駅の周辺でも、隣接市との境があるために一律に誘導区域を分断している場所があります。一見すると、市境で区域内・区域外の明暗を分けてしまうのではないか、と懸念があります。しかし、隣接市側は区域外だからといって悲観しているわけではありません。計画区域内では開発に関する制限が発生しますが、区域外だとこのような制限がないために住民や民間団体が独自に開発しやすいからです。

 立地適正化計画は足の長い取り組みのため、秋田市ではまだ結果が出ているとは言えない状況ですが、この市境を挟んだ取り組みなど、今後の動向が注目されます。

 

国自治体主導の街づくりの限界

 現在、立地適正化計画に取組む自治体は、全体の15%程度。コンパクトシティ形成には、近隣自治体との協調が必要ですが、現時点では多くが市町村単独の取組みに留まっています。計画を策定していない、開発に関する制限の少ない近隣自治体に人口が流出し、計画策定済みの自治体の努力が水の泡となることも懸念されます。

 立地適正化計画を策定している自治体でも、区域外の開発を例外的に認める制度を持っていることがあります。これでは、結局居住エリア全体で人口密度が低下してしまいます。

 立地適正化計画の進捗状況をみていると、自治体主導の街づくりには、限界があるのかもしれません。民間団体が現地の住民の声を吸い上げて、長い目で見た住みやすい街づくりに取り組まないと、成功は難しいように見受けられます。住民に寄り添いながら、民間団体が街づくりに取り組むことが、結果的に住民への恩恵につながるのでは、と考えています